産業用SDカードの選び方

発売から約20年が経ち、今では世界的に普及しているSDカード。手軽なストレージとして民生用に広まったSDカードですが、近年はIoT機器や自動車分野など、産業用途でも幅広く使われる様になってきました。その背景として、産業用途でのデータ活用が急激に広がってきたことが挙げられます。一方、産業用途では民生用途よりも書き換え頻度が格段に高かったり、高温での稼働を必要としたりなど、過酷な環境での使用に耐えうることが求められます。その反面、継続購入するSDカードに対して性能バラツキを抑えつつ長期供給が望まれるなど、安定性も必要です。具体的にはどの様な観点で産業用SDカードを選べば良いのでしょうか?

選ぶポイントは 「バランスの良さ」

<図1>  製品とメーカーの両方を見極める

産業用SDカードを選ぶために考慮すべき点はいくつかありますが、重要事項が一つでも劣っている場合は後々の悪影響が大きくなります。民生用では製品の仕様が注目されますが、産業用はそれに加えてメーカーでの体制も求められます。産業用SDカードを選ぶ際は、それらがバランス良く良好であることを見極める必要があります。

製品はホスト側の要求仕様で選ぶ

  1. 電気的特性

SDカードは規格を策定する団体であるSDアソシエーションによって標準規格が定められており、形状と物理仕様はどのSDカードメーカーの製品でも共通です。そして、容量によって SDSC(最大2Gバイト)、SDHC(最大32Gバイト)、SDXC(最大2Tバイト)、SDUC(最大128Tバイト)に分かれます。この分け方はSDカード、microSDカードとも共通です。SDカードの仕様はラベル上でも記号にて記載されています。それらの仕様を確認することは民生用と同様ですが、産業用ではデータシートの内容も確認し、ホスト側の要求仕様を満たすかどうかの確認が必要です。 

<図2>  SDカードのラベル表示

2. 信頼性・耐久性

産業用SDカードは民生用と比べて高信頼性、高耐久性が求められます。用途によって重視すべき信頼性や耐久性が異なりますので、用途に合った仕様であることを確認する必要があります。

<表1>  産業用SDカードに求められる仕様

SDカードの主要部品はフラッシュメモリとコントローラです。記憶部分であるフラッシュメモリは、その構造からSLC、MLC、TLCなどに分けられます。どれも書き換え回数(P/Eサイクル,  Program/Erase cycles)には限界があり、SLC>MLC>TLCの順で書き換え可能回数は減っていきます。価格も一般的にSLC>MLC>TLCとなっており、書き換え可能回数が多いSLCはSDカードとしては高価です。書き換え可能回数と価格を両立させるために、物理的な構造はMLCやTLCながらSLC並の書き換え可能回数を実現した aMLC(advancedMLC)や aTLC(advancedTLC)という製品もあります。また、コントローラの機能でウェアレベリングなどを行って書き換え可能回数を上げている場合が多いです。ドライブレコーダー、監視カメラの様に常時書き換えが必要な用途では、書き換え可能回数の多い仕様が必要です。産業用途では高温や低温環境で使われることも多いので、必要に応じて温度拡張品を選びましょう。

<図3>  コントローラにより長寿命化、高P/E化

メーカー側の体制も確認が必要

  1. 長期供給

産業用機器は長期間に渡って製造、販売される一方、SDカードの主要部品であるフラッシュメモリは世代交代が早く、新世代のフラッシュメモリは旧世代のフラッシュメモリを置き換えていきます。この相反する状態でSDカードを製造・販売するためには、メーカー側での様々な対応により長期供給を保証する必要があります。

2. サポート

購入前から購入後に至るまで、メーカーの手厚いサポートを受けられるかどうかは重要なポイントです。そのため、メーカーの技術・営業体制、及び、品質保証体制をしっかり見極めることが大切です。産業用途では、ホストからSDカードへのデータの書き込み仕様や、ファイルシステムなどにおいて、ホスト側とSDカード側の相性が合うかどうか評価する必要があります。そして、評価の計画段階や評価中にお客様にて様々な疑問点が出てくる場合もあります。また、万が一不具合が発生した場合は迅速な原因究明と対策が必要となります。そのため、サポートや不具合対応の体制がしっかりしたメーカーからの購入が望まれます。

<図4>  メーカーの体制を見極める

3. 部品固定  

産業用途の場合、民生用途とは違って多数のSDカードを継続的に入手して産業用機器で使います。SDカードは使用部品によって性能にバラツキが出ますが、このバラツキはホスト側との相性に影響を与えます。ホスト側としては、継続して購入するSDカードとは継続的に相性が良い必要があります。主要部品であるフラッシュメモリとコントローラ、そして、コントローラを制御するファームウェアは特に影響が大きいです。そこで、搭載する部品を将来に渡って変更しない「部品固定(BOM固定)」を明示しているSDカードを選択することが重要です。

民生用途でも考慮が必要な場合も

SDカードの書き換え回数が多いドライブレコーダー、監視カメラなどは一般の方々にも普及してきました。そして、普及に伴ってSDカードの不具合も増えてきました。独立行政法人国民生活センターによると、以下の様にSDカードへの理解不足が見受けられ、注意喚起が発表されています。一般の方々にもSDカードへの理解が求められる様になってきました。
①約6割の人が、SDカードのフォーマットや交換が必要なことを知りませんでした。
②約6割の人が、SDカードのフォーマットや交換を実施していませんでした。
③1割以上の人が、仕様に合っていないSDカードを使用している可能性がありました。

製品情報

アドテックは、産業用途のフラッシュメモリ製品としてSDカードに加え、SSD、USBメモリも取り扱っています。コントローラメーカーと長年に渡り協業を進めており、フラッシュメモリに関する各種ノウハウを積み重ねてきました。各種情報提供やサポートに加え、国内拠点での品質保証体制を整えております。産業用SDカードに関するご相談がございましたらお気軽にお問合せください。

関連コラム

↑